牛馬獣医のつぶやき

往診獣医です。牛馬の診療経験、学術的知識、主観的考察を記録していきます。

子牛の敗血症

25日齢の黒毛和種子牛

 

元気がなくなり、水様下痢とのこと。

 

「子牛の下痢」と聞くと、感染性or非感染性であるかをまずは診断しなければならない。

感染性→細菌?ウイルス?寄生虫

非感染性→消化不良?一時的な痙攣?

 

生後まもなくで、全身状態がひどければ大腸菌が関与している可能性がある。

1か月以内では、ロタウイルスクリプトスポリジウム、はたまた母乳の飲みすぎによる消化不良も多い。

1か月以降はコクシジウムや一時的な痙攣性下痢、感冒が関与した下痢などがある。

 

 

ともあれ、まずは体温測定。

T37.9 P78

体温は低め、徐脈。体調は悪いようだ。

熱が高ければ、感染性とすぐに判断し抗菌薬投与である。

しかし、熱が低くても要注意である。弱っているサインだ。

単純な下痢でも、腸内細菌叢の乱れから有害細菌が異常増殖し、体調が悪化することもある。

 

白色便。悪臭+。いわゆる白痢というやつだ。

起立はできているが、一応点滴と抗菌薬を投与する。

 

普通の下痢であれば、点滴すれば翌日には軽快しているものだ。

しかし、この子牛の状態は悪化した。

T36.9 P78

水様下痢継続。

電解質を経鼻カテーテルで投与し、点滴も実施。

敗血症を考慮し、ニューキノロン系抗菌薬に変更、ステロイドも使用する。経口の抗菌薬も併用。

 

さらに翌日

T38.0 P76 R32

呻吟し、呼吸も深い。脱水はない。

血液検査:WBC43200/μL,Ht21.9%,Cre6.32mg/dL

すでに敗血症(sepsis)で、腎不全(renal failure)も併発している。

この結果を見てしまうと、治る見込みは薄いと感じた。

 

酢酸リンゲルや重曹の点滴、抗菌薬を継続した。

 

その後5日間生きていたが、やはり助からなかった。

 

~~

大半は何事もなく治る下痢であるが、中には急性経過をたどって死に至るケースもある。

今回のような敗血症を伴うもので要注意なのは、サルモネラである。

ただ体温が高くはなかったし、牧場内で多発することもなかったので除外される。

こういった場合のほとんどは、クロストリジウム(Clostridium perfringens)の関与だと私は考えている。

詳細な検査はしていないので確証はないが。

 

ウイルスやクリプトスポリジウムが関与していたとしても、それ単体で死ぬことはないだろう。

 

現在の私の診療地域では、こういったことに度々遭遇する。

下痢発症1日で急激に全身状態が悪くなる若齢子牛。

有害菌の土壌汚染=風土病とでも言うべきか…。

過去に死亡した子牛の検査をしたことがあったが、病名は「壊死性腸炎(Necrotizing Enterocolitis)」であった。

 

解決すべき問題は山積みだ。